- 過去のリターン≠将来のリターン
- アメリカ強さは続かないかも
- ガチの資産運用は投機的要素のないオルカン一択
日本の先行きが不安になってきて資産運用を検討し、手始めにつみたてNISAを利用したインデックス投資を開始しようとされている方も多いかと思います。
インデックス投資の投資先としてよく候補に挙がるのが
- S&P500
- 全米
- 全世界(オルカン)
大体この3つですね。
これまでのアメリカの成長の実績からこれからも世界の中でアメリカは強いと思う人は、よりリターンが望めるS&P500 or 全米。
いやアメリカ一強は続かないかもしれない、これからは中国やインドといった新興国の時代に変わる可能性もあると考えるならオルカン。
こんな感じで投資対象を決めてくださいと説明されていることが多いと思います。
そしてアメリカとオルカンのこれまでのリターンを見比べて
「オルカン弱すぎ、、、アメリカ一択やん、、、」
との結論に至り、数多くの方がS&P500もしくは全米に連動するETFや投資信託を購入されているかと思います。(私もそうでした。)
これからもアメリカ株が強いだろうと思われる理由はたくさんあります。
- 海外売上比率も高い
- オルカンの構成銘柄の6割はアメリカ株
- 先進国の中で唯一人口増加傾向
アメリカを代表とする会社、例えばFAANG(Facebook, Apple, Amazon, Netflix, Google)などは我々日本人の生活にも入り込んでいますし、日本で生活しているにも関わらず日本の商品サービスよりもアメリカ発の商品サービスに触れている時間の方が長くなってしまっています。
またアメリカの会社は本質的な株主還元意識が高かったり、企業の成長に欠かせない自国の人口についても先進国の中で唯一増加傾向ということもあり、世界中からお金が集まっている結果として、オルカンの構成銘柄の6割はアメリカ株が占めるまでに至っています。
なのでS&P500もしくは全米に連動するETFや投資信託を買っていればそれなりに分散も出来て、リターンも求められる。最強じゃんと。
それに比べてオルカンは不安定な中国株やオワコンが加速しそうな日本株も含まれていれてリターンを悪化させそうな要因はたくさん考えられる。
「オルカン、微妙すぎないか???」
実際に過去のリターンとリスクを見ていくとオルカンは全米と比べて劣後していた結果となっています。(シャープレシオが高い方が投資対象として優れています。)
実際に私もアメリカ株の積み立てを実施していたように、普通に直感的に考えればアメリカ株の優位性しかないように感じられます。
しかし私は超長期(30-50年)の時間軸で投資するのであれば「オルカン」一択だと考えています。
見たい場所へジャンプ
そもそもインデックス投資の本質とは
そもそも論、インデックス投資の本質を理解していれば「アメリカ」or「オルカン」という選択肢はそもそも存在せず、「オルカン」一択なんですよ。
この点を説明し始めると記事が長くなりすぎるので、詳しく知りたい方はこちらの記事を読んでみてください。

ざっくりの結論を言うと、インデックス投資の本質は世界が発展するに従って増える株式のリターン(β)を出来るだけ少ないリスク(σ)で享受することです。
そしていくつかの条件が整った時、全世界に時価総額加重平均で投資を行うと、βが最大化され、σが最小化されることになります。
つまりその時、オルカンが最強になるのです。
時価総額加重平均で投資する限り、投資対象は出来るだけ多い方が良いわけですから、投資対象をアメリカに絞ったS&P500や全米は最適な投資対象ではありません。
「いや、これまでのリターンを見るとアメリカの方が強かったじゃん」
そんな声が聞こえてきますが、今説明しているのはあくまで理論上の話です。
これまでの10年は条件が整っていなかったためオルカンの成績が劣後しており、これからの未来において条件が整うことはないのかもしれません。
50年後、結局アメリカに集中投資をしていれば結果的に正解だった、ということは普通に起こり得ます。
しかしそれは「結果論」に過ぎません。
例えば極端な話、公務員として働くか、起業するか、どちらがお金を稼げるでしょうか。
成功すれば起業した方がお金を稼げた結果にはなると思いますが、始める前は公務員の方が理論上の期待値は高いはずです。
未来はわかりませんが、今現時点においてどちらが期待値が高いか、という問題の解は「オルカン」ということです。
先ほど紹介した記事でオルカンが最適解であることは証明できているのですが、やはり直感的に理解しにくい部分があるかと思いますので、様々な事例を紹介してオルカンの優位性をお伝えできればなと思います。
過去のリターンで投資判断をしてはいけない
人は過去の成績から、今後も同等の結果を出してくれるのではないかと感じてしまいます。
これは「ギャンブラーの誤謬」と呼ばれる現象で、例えば表と裏が出る割合が完全に五分五分のコインがあったして、表が5回連続で続けば、次も表が出そうだと錯覚してしまいます。
実際には過去の表が出た回数は関係なく、次に表か出るのか裏が出るのか、それは五分五分です。
仮に100回、1,000回と試行回数を増やしていけば、表と裏が出る回数は五分五分に収束していくでしょう。
これは株式投資においても同様で、投資判断に過去のリターンを加味しすぎると、正常な判断ができなくなります。
例えば過去10年間で毎年100%株価が伸び続けている会社があったとして、その会社は今後も毎年100%のリターンが約束されているのでしょうか。
毎年株価が100%伸びるという強さは認められるべきだと思いますが、今後のリターンを約束するものではありません。
またコイントスと違い、株価が高くなるとハードルもどんどん高くなる性質があります。
どうして株価が100%伸びたかというと、ほとんどの場合、投資家達の予測を大きく超える成長が出来たからです。
翌年さらに大きく株価を伸ばすには、これまで以上に高くなったハードルを超えていかないといけないのです。
別に投資家は特定の会社にのみ投資しないといけない、というルールは存在しないわけですから、もっとハードルが低く設定されている会社に投資することを選択し始めます。
話を分かりやすくするために個別株で説明しましたが、これは国単位でも言える話です。
かつては日本が世界一だった
今じゃ考えられませんが、かつて日本は世界の時価総額ランキングで上位を占めていたのです。
そしてそもそも、株式というものを発明したのはオランダ人ですし、産業革命を起こして生産性を劇的に向上させたのはイギリスです。
世界大戦の前にはこれらヨーロッパの国が経済を牛耳っていました。
そして2000年代から中国が爆速でアメリカを追走しています。インドのポテンシャルもとてつもなく、ここから急成長を遂げても何もおかしくありません。
2030年にはアメリカが中国に抜かれ、2050年にはインドにも抜かれると多くのシンクタンクが予想していたりしますね。
未来はあくまで予想に過ぎませんが、アメリカが世界一位をこれからも維持し続ける、と断言することはできますか?
そして維持するだけではダメです。
これまで圧倒的に成長したが故に自分自身に課してしまった高い高いハードルを超え続けなければいけないのです。(しかも他国よりも高い成長率で)
個人的にはアメリカにはそのハードルを超えるポテンシャルがあるのではないか、と考えてはいますが、変化の激しい現代社会では何がどうなっていてもおかしくありません。
わかっておいてほしいのは、日本がかつては世界一だったように、今後アメリカも同様の立場になっていても別におかしいことではないってことです。
というか2000年代は実際にアメリカ株が弱かったんですよ?
もう長年ずっとアメリカ株の一強状態が続いているように感じてしまいがちですが、2000年代はアメリカ株が弱かったのに対して新興国株が強かったのです。
この時の相場は「いよいよ新興国の時代が来た!!!!アメリカオワコン!!!」みたいな風潮だったそうです。
アメリカ株が強く見えるのは当たり前
こういうアメリカ株の右肩上がりのチャートを見て、20年間投資し続けていれば5倍で〜、毎月10万円投資していれば〜みたいなシミュレーションを多く見かけますが、良い結果になるのは当たり前です。
だってアメリカが弱い年に投資をし始めて、アメリカが圧倒的に強かった2010年代を経たチャートを見ているんですから。
簡単に調べられるこれまでの株価の歴史は大体20〜30年前からのものが多いですから、どんなチャートを見ても大体アメリカが強いです。
10年後にはそれが中国になっていても別におかしくないです。
ガチの資産運用はオルカンしかない
よく「投資」と「投機」という言葉が使われますが、ガチの資産運用つまりは老後資金であったり、子供の将来のためのお金、インフレヘッジのための資産運用は「投機」的要素を一切排除するべきだと考えています。
投資と投機の解釈には様々ありますが、私は下のようなグラデーションになっていると考えています。
株式の中ではオルカンが最も分散が効いているわけですから、これ以上リスクを下げる(投機的要素を排除する)ことはできません。
その他インデックスは例えば全米、S&P500、ナスダック100、TOPIXなどですね。
オルカンと比べてどれも投資対象が狭まり、またセクター(消費財、ハイテク、金融等)の偏りもみられるので、相対的にオルカンよりリスクが高くなります。
個別株は言わずもがなでしょう。日本に生きていれば数年前まで世界一と言われていたような会社が没落する姿を何度も見ているはずなので、相当にリスクが高いことは自明でしょう。不正会計をやらかせば一発で終わることもあります。
オルカン以外のその他インデックスの中で最も分散が効いていて、なおかつ投資対象として適当なのは全米だと思われますが、先述したように、強いアメリカはいつまで続くか、そしていつ終わり、またいつ始まるのか、全くもってわかりません。
例えば2000年に投資をし始めるとして、あなたはどこに投資をしますか?(ただし途中で乗り換えると投資効率が著しく悪くなるので乗り換えるのはなしとします。)
新興国株なら2010年まではリターンが良かったものの、2010-2020年はアメリカ株の圧倒的な強さを指を咥えながら見続けないといけません。それも2020-2030年の新興国のターンが来たらまた巻き返せる。しかし、いつになったらまた新興国の時代は来るのだろうか…。
アメリカ株なら2010年までのリターンは冴えないものの、ここで安い株価でたくさん仕込むことが出来たので、2010-2020年は圧倒的なリターンを叩き出します。しかし、2020年代になるとアメリカ株は新興国株に対して割高感が出てきました。これは売り時なのか、それともまだまだアメリカの強さが続くのか…。
このようにオルカン以外の選択肢を取った場合、常に何かしらの不安を抱えながら投資をしないといけなくなります。
それはリターンを少しでも良くしたいという自分の予想、つまりは投機的要素を入れてしまうからに他なりません。
オルカンは常に他の指数に劣る
オルカンは万能かのように書きましたが、実はオルカンは常に他の指数にアンダーパフォームしているという特徴も併せもちます。
単純にオルカンには今現在強い国と弱い国が全部入っているからですね。
例えばアメリカが強い時はオルカンはアメリカにアンダーパフォームしますし、中国が強い時は中国にアンダーパフォームします。
常にどこかをアウトパフォームし、逆にどこかにアンダーパフォームするのがオルカンです。
当たり前な話ですが、この視点が抜けてしまっている人が多くいるように思います。故に今強いアメリカに投資したくなるんだろうなと推察しています。
長期で見ると必ずどこかでアメリカをアウトパフォームする国や指数が出てくるわけで、その度に投資先を乗り換えていけばコストばかりかかって、「最初からオルカンにしとけばよかった」というシナリオになるかと思います。
オルカンに低コストで投資できるようになったのはここ最近
投資を最近始めた人は初めからオルカンという選択肢もあるわけですが、実は日本でまともにオルカンに投資できるようになったのは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が誕生した2018年11月からです。
それまでも「$VT」、「$ACWI」などのETFを用いて比較的低コストで全世界に分散投資することが出来ましたが、日本から投資する際にこれらには「三重課税」という重大な欠陥があります。
三重課税の詳しい解説はこちらの記事が参考になります。
参考 VT、楽天全世界株式(楽天VT)の三重課税問題について解説します河童のインデックス投資ざっくり説明すると、アメリカ以外の国からの配当金はまずそれぞれの国で課税され、それをアメリカで課税され、さらに日本でも課税されてしまいます。
とてつもなく大きなコストではありませんが、数十年運用するのであれば認識しておくべきコストで、それなら全米ETFの「$VTI」に投資する、というのが「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が誕生する前の最適解だったわけですね。
ETFではなく投資信託であれば信託手数料はやや高くなりますが、配当金の受け取りに税金がかからず自動的に再投資もしてくれますし、現状はオルカンに投資するなら「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」一択だと考えています。
現在インデックス投資で結果を出している人がほとんどS&P500や全米に積み立てている人が多いから、右にならえでアメリカ株を選んでいる人が多いのかもしれません。
5年後くらいにはオルカンの方が主流になっているのではないかと個人的には考えているのですが、どうなるんでしょうか。
投資は結局自分が納得できるかどうか
どれだけ理論上正しい、と言われても自分の中で腹落ちしていなければ投資を継続することは難しいです。
冒頭の方で公務員として働くか、起業するか、どちらがお金を稼げるかという話をしましたが、誰が計算してもやはり公務員の方が期待値が高くなってしまうでしょう。
しかし必ずしも公務員になる必要は全くもって当然ありません。
期待値が高いからオルカンにしろ!というのは親から安定している公務員になれ!と言われているようなもので、確かにそれが合理的かもしれないけれども、人生それだけじゃねーよなと思うのが普通だと思います。
人生における価値観が人それぞれあるように、投資に対する向き合い方も人それぞれですし時期によっても最適解は変わるものだと思っています。
実際に私はオルカンが最適解だとわかりながらも今現在はオルカンの対極にあるような「レバナス」や「$TSLA」に集中投資しています笑。
これはこれで今の私にとっては合理性があるので選択しています。
ただ、ただただただ!!最後に一つだけ伝えておきたいのは、ほとんどの人はオルカンを選択しておけば将来後悔することはおそらくほぼないよってことですね。
逆にオルカン以外の選択肢を取ると、何かしら後悔を感じることになる場合があるかと思います。
まあでもそれも人生!情報を取捨選択して、行動して、振り返って、反省して、より良い選択ができるようになっていきましょう。
コメントを残す